最初から最後までやってくれる業者さんと、面倒な所は客任せな業者さんがありますが、後者の方が安いのと、最終的な仕上がりを完全にこちらがコントロールできるので、そちらを使うことを前提に説明します。つまり出力終了後の後処理の説明と思って下さい。

出力

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専用アプリケーションでこんな具合にして形状データを配置します。

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出力途中の様子。平らにならした粉に糊で断面をプリントして、その上に薄く粉を敷いて断面をプリントし…を繰り返して造型していきます。糊にインクを混ぜてあるので色は自動的に付きます。原理も機構もインクジェットそのもので、紙の代わりに粉に断面を印刷すると思って下さい。

ここはひたすら待つだけ。モノが小さいのでセットアップも含めて2〜3時間もあれば終わります(立体出力機としては物凄く早い)。

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出力終了直後の状態。ここから部品を掘り出します。

クリーニング

ここからは含浸(後述)が終わるまで一瞬も気が抜けません。

まずは粉の中から部品を掘り出します。刷毛を使いながら少しずつ粉を払いのけます。どこに何が埋まっているのか予め判っている以外は化石や遺跡の発掘と同じです。

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掘り出した直後。粉の中から掘り出したから粉まみれです。

まず空気を吹きかけて粉を飛ばします。部品が破損しないようにエアの圧力は最低で。

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空気による粉の除去が終わった状態。この段階では完全に粉が落ちていないので、筆やブラシを使って慎重に取り除きます。

この時の出力物は非常に脆く、ちょっとした事で簡単に破損します。この作業が最も神経を使いますが、最終的な仕上がりが大きく左右されるので手は抜けません。

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電動ヤスリの先端に水彩画用の筆の毛を移植したものを作りました。メカ部分は一本数百円の電動歯ブラシでも良いでしょう。

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歯ブラシを使った手作業に比べて毛が柔らかく、また往復運動のストロークも小さいので、ディテールへのダメージを最小限に抑えることができます。ただし柔らかい毛の振動で少しずつ粉を払うので、時間はかかります。早く仕上げるためではなく、安全かつ綺麗に仕上げるためと思って下さい。

含浸(がんしん)

出力時にはノズルが目詰まりしないように弱い糊しか使えず、従って出力物は非常に脆いので、クリーニングが終わった後により強力な接着剤を改めて染み込ませて充分な強度を持たせます。

それまで白っぽかった部品が鮮やかに色付いて苦労が報われる瞬間ですが、最後の最後まで気を抜かないで下さい。

用意しておくもの

含浸液はZBondという純正品が用意されていますが、シアノアクリレート系の瞬間接着剤なら何でもいけるみたいです。

今回はセメダイン社の「ロックタイト 高強度金属用」を試してみました。ちょっと粘度が高い(つまり染み込み難く拭き取りにくい)ので入り組んだ所に残りやすいですが、発色と強度は申し分ありません。値段が安い(純正品の半分以下)のも嬉しい所です。ただしめちゃくちゃ目に染みます。涙と鼻水が止まりません。初めての人や家族がいる人は大人しく純正品を使っておくのが吉。

これを染み込ませるには刷毛で塗る、上からかけるなど色々な方法がありますが、今回はモノが小さいので一番単純かつ確実な、通称「ドブ漬け」が良いでしょう。

含浸液を紙コップなど適当な容器に入れて、その中に部品を入れます(極端に細い所はこの時の衝撃で壊れたりするので要注意)。

部品を含浸液に漬ける時は、素手で触らずに綺麗な竹串などを箸代わりに使うのが良いでしょう。引き上げにも竹串を使うと良いですが、漬ける時とは別な竹串を使わなくてはなりません。というのも引き上げる時に付いた含浸液(大概半乾き)が部品に付いてしまい、その部分が含浸不良を起こすからです。

数秒もすれば全体に染み込むので液から引き上げて、ペーパータオルなどで丁寧かつ手早く(モタモタしていると紙がくっついて悲惨な事に)拭き取ります。この時には既に充分な強度を持っていますが、余り力を込めるとあっさり割れてしまうので注意して下さい。素早さと手先の器用さが同時に試されます。

拭き取りが終わったらどこかに置いて乾燥させなくてはいけませんが、まだ接着剤が残っているのでテーブルの上とかだとくっついて大変な事になります。メーカー側はキッチンペーパーのようにつるつるした紙の上に置くことを推奨していますが、僕が個人的に試した所ではしわしわのアルミホイルが良い感じです。

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接触面積が小さいのでくっつきにくいし、万一くっついても比較的簡単に処理できます。

ただし、完全に乾燥するまでは絶対に素手で触らないで下さい。シアノアクリレートは警察でも指紋の検出に使うぐらいで、生乾きの時に素手で触ると指紋がべったり残ります。

完成

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最後に、首と体を繋げるためにピンバイスで穴を開けて、直径1mmの真鍮線を通してやります。意外と簡単に穴が開くので、貫通してしまわないように気を付けて下さい。

せっかく含浸まで無事に終わったのに、最後のうっかりミスで全てがパァなんて悲しすぎます。 inserted by FC2 system